虚貝-Monologue

ひとりごと

 僕には空っぽになったところがある。
 中身があればとびきり愉しいところが、僕にはない。
 だから僕は、いつだって生きているのが愉しくない。
 くりぬかれてくりぬかれて、僕には何もない。
 なのに、突き刺されるたび、何かを持っていかれる感覚に傷つく。
 壊死が広がる。
 空虚な無感覚が広がる。
 意識から認識に、どろどろと虚しくなっていく。
 限界だった。
 どうなってもよかった。
 いっそ死んでしまいたい。
 だけど、いざ死ぬ勇気は出ない。
 かといって、あっさり死ねるようになるまで、なおあの下敷きになるのは嫌だ。
 どうなってもいいのなら、どうなるか分からないところに行くしかない。
 そして、僕は今、ここにいる。

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