針が午前零時を過ぎる
今夜こそ抵抗するんだ
キッチンから盗んだ包丁を握りしめて
ドアが開くまで耐える
俺の中に血が広がってるんだ
激痛はついに破裂
そのとき狂気が流れこんできた
そして分かった
殺せばいい
殺せばいい
殺せばいい
あんな奴
殺せばいいじゃないか
自分を切ったって終わらないんだ
どうせなら
あいつの喉を掻っ切ろうぜ
秒針が黒い霧を吐く
今夜こそ終わらせるんだ
カミソリを当てた手首を抑えて
暗い部屋に明かりが射す
自殺の真似事を繰り返す
もっともっともっと
希死念慮を積み重ねて
俺は切れる
死ねばいい
死ねばいい
死ねばいい
俺なんか
死ねばいいじゃないか
あいつを殺せるのか?
なぜ怖い?
人を殺すのが怖い
それくらいなら自分を
それくらいなら自分を
それくらいなら自分を
包丁が俺の手首を走る
血が冷たいシーツに染みこんでいく
赤い感情が剥がれて落ちていく
足音が近づいてくる
「こんなことはダメだって言っただろう?」
殺してくれ
殺してくれ
殺してくれ
あんたに
もう許してくれ
あんたを殺して
逃げたいのに
俺は何もできない
赤いベッドは生臭い
あんたの精液も生臭い
その腹を刺すつもりだった包丁は……