呪われた子宮
理衣くんと砂場で遊んでいた。作りあげた山にトンネルを掘っていた。「理衣」と柔らかな女の人の声がして、理衣くんはぱっと振り返った。「おかあさん」と理衣くんは立ち上がって、女の人に駆け寄った。
細い、白い、綺麗な女の人だった。
ああ。ふたりのおかあさんか。
……ふたり?
そう思った瞬間、凄まじい吐き気がせりあげ、記憶まで混ぜ返された。優しい笑顔。つかんで食いこむ手。シーツの赤。冷たい眼。真っ白の精液。引き裂かれた軆。心を染める血──
はっと目を開けた。まだ軆が鈍く重たかった。
光が射している。ここがどこなのか分からない。どこかに横たわっている。うめくと、光の中に人影が浮かんだ。
「もう大丈夫だよ」
知らない男の人の声だった。理衣くんや瑠衣さんじゃない。私は息をついた。
よかった。誰か保護してくれたんだ。
「話は聞いた」
話……? 私、無意識に全部しゃべったのかな。
「君は今日から、ここで僕たちと暮らそう」
──え?
「かあさんが帰ってくるんだね」
……理衣くん?
「何でもする、ってのは伊達じゃなかったか」
瑠衣さん──
「こまちゃん。やっと君を許せるよ」
目の前に何かをちらつかされた。
「陽性か。たぶん、理衣じゃなくて俺だな」
何の話……?
「かあさんの血を持ったお前たちの血を継いでいるなら、それはかあさんがよみがえるということだろう。──ここから」
お腹を優しく撫でられる。むかむかする吐き気が生々しくなってくる。
「かあさんが生まれてくるんだ」
「もう会えないと思ってたよ」
「お前たちは、本当にいい息子たちだ。今度こそ、かあさんを守ろう。大好きだって何度も言ってあげよう」
「三人でね。ありがとう、こまちゃん──」
三つの影が、逆光の中で私を見下ろしている。笑う口元はみんなそっくりだ。
──ああ、血だ。みんな、同じ血だ。この人たち、狂った血が流れている。
そして、その呪われた血が、私のお腹の中まで冒している。
目の前が暗くなる。もうダメだ。動けない。重くて動けない。吐きたくて、胸がぐちゃぐちゃと膿んでいく。
黒い血の枷が、私の肢体を縛っている。逃げられない。助からない。私は黒血を宿してしまったのだ。
優しく頭を、お腹を、脚をさすられる。意識がまた遠のいていく。狂おしい愛撫が絡みつく。軆に忌まわしい血が広がる。脳まで呪いに染まる。
私は、息もできなくなって──一瞬、三人に混じって、白く細い影が咲った気がした。
それから先は、もう、何も分からない。
FIN
