蒼い肌
俺の肌は精液に似ている。青くて白く、艶々している。透き通ってしまいそうなのに、細胞に濁っている。
指を這わせると、ねばつきそうな錯覚も覚える。蕩けたチーズのように長く指に絡みつく。そんな幻覚をよぎらせる。
左の腕に、右の指先を這わせた。すべすべした肌には、ケロイドがある。俺はその部分を愛撫して息を吐く。
ケロイドは俺が生きている証明だ。彫刻なら同じ色のセメントをすりこむことで、何も残ったりしない。
肌にはくっきりと血管が映し出されている。全身に伸びゆくそのさまは痛々しい。手首に指を当てると脈打ちが伝わる。この血管をちぎれば、俺は死ぬだろう。血管には俺の命が流れている。心臓が吐き出す真っ赤な命がめぐっている。
死こそ、俺が人間である証拠だ。破損し、爛れ、腐蝕する。腐敗は生きていた証拠だ。俺は腐る。この息が止まれば、美しい容姿は蛆に侵蝕され、すさまじい匂いを放って腐爛するだろう。
陶磁器のような肌を愛撫する。ケロイドを持ち、血管を秘匿する、薄くてしっとりした肌。本当に陶磁器ではないのを確かめるため、じっくりと撫でてみる。
これは俺の皮膚だ。
明かりを受けた肌は、ほのかに輝いている。その淡いきらめきは柔らかなめまいを起こし、俺は息を震わせる。肌の上を指先が行き来する。
顔を上げた。明かりに照らされた鏡には、俺が映っている。
俺は美しい。完璧だ。十五年間で、少しの乱れもない。
艶やかな黒髪。飲みこむような深い瞳。すっとした鼻梁。真っ赤な唇。無駄が削がれた頬と顎。華奢な肩。細い腕。儚げな腰つき。すらりとした脚。
俺には欠落がない。ゆえに人間味がない。まるで彫刻だ。
右手を伸ばした。洗面台の脇のそれを手に取る。
銀色のカミソリだ。
左腕を見下ろす。青磁のような皮膚。俺の肌は精液に似ている。彼の精液に、よく似ている。
カミソリを乗せた。冷たさは一瞬で、刃はすぐ俺の体温に順応する。
揺らめく息をこらえる。目を開いて、カミソリを肌に押しつける。ひずんだ肌に銀色が埋もれ、刃を引くと、青白い肌が裂けて鮮紅の液体が勃起した。
白い肌に深紅の雫がすべりおちていく。
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