何でも吐いてしまう女の子がいました。
ママは言います。
「食べないと心も軆も病気になってしまうわ」
パパも言います。
「おいしいものを買ってきたから食べなさい」
女の子は仕方なく口に入れますが、すぐに吐き気を覚えます。
一度吐き出すと、空っぽになるまで吐かないと気が済みません。
そんな女の子も、やがて成長して好きな人ができました。
好きな人は「君が心配だよ」と言いました。
「何でもいい、少しでも食べて? 長く君のそばにいたいから」
女の子は生唾を飲みこんで、好きな人に微笑みました。
「じゃあ、あなたを食べたいわ」
そして、女の子は好きな人を食べてしまいました。
満たされたお腹は幸せでしたが、好きな人の笑顔はもうありません。
そのことに気づいて、女の子は吐き散らしました。
「そばにいたいって言ったのに」
ママに向かって吐きます。
「だから食べたくなかったのよ」
パパに向かって吐きます。
けれど、疲れ果てたママもパパも、女の子に何も言いません。
「誰も私を分かってくれないわ。結局、あの人だって」
女の子は吐きつづけます。
お腹で腐る言葉を吐くだけ吐いて、誰の言葉も聞きません。
ついに周りには誰もいなくなり、女の子はひとりぼっちになりました。
食べ物を与える人も、言葉をかける人もいません。
「……おなかすいたよ」
女の子がそうつぶやいても、もう誰にも届かないのでした。
FIN
